言葉は偽られるけれども、手は偽られることが少ない。

 

この女性はるり先生という方です。なぜ、とーとつに、ここに出てくるかというとこういう次第です。

画廊ではお立ち寄りいただいたお客様に茶と菓子を召し上がっていただいていますが、その菓子をつくっていただいているのがこの御婦人なんです。るり先生というのはぼくがつけたあだ名で本当は高山たまきさんといいます。

初めてお会いしたというか出会ってしまったのはブログでした。今から15年以上前になるでしょうか、写真ブログ的なものが流行っていて、最初のフィルムカメラブームみたいなことがあったのです。その頃ぼくは当画廊の画家である安東から写真を始めてみたらというそそのかしでデジカメを買っては写真を撮ってブログにアップしていてその記事に先生がいらしたのが最初です。

以来、ブログ上でのやり取りは続き、先生が拠点とされている小倉まで遊びに行ったり、ぼくがこっちで写真展をやると娘さんと一緒にお越しいただいたり、と、まあ、そんな感じで懇意にしていただいていました。息子さんもお持ちで、これがまた、ムカつくほどの優秀なやつで京都にある大学の経済学部を卒業して、超が付く一流商社で職を得たと思ったら今度は広告代理店へ転職。そして学生時代にはぼくに捕まり恋愛リレー小説なるものを綴っていたりしました。森鴎外と菅原孝標女と黒ビールが好きな文学青年なのです。その時書いていたリレー小説はこちらです。

おっと、彼の話ではなくて先生のことでした。先生は小倉でティーサロン「アリアンス」という店を営まれていて、料理研究家でもあるのです。遊びに行くとささっとご飯をつくってくれて、もちろん美味しいのは当たり前なのですがサーヴの仕方がいやらしいくらいに素晴らしいんですね。でも、ぼく、氏育ちがアレなのでどっちかというと町中にあるとんでもなく安い居酒屋のソースだけで味付けをした麺だけのやきそばとかを好んで食べてるのですが。。。

枕が長くなりましたが、この方、るり先生に画廊のオリジナルクッキーをね、つくっていただけませんかと恐る恐るお伺いを立てたところ、快くお引き受けいただいたという次第です。

材料は小麦粉、バター、砂糖、アーモンド粉、マルドン塩。バターは北海道四つ葉乳業製、小麦粉は福岡県産の香り高い薄力粉だそうです。先生の経験実感だとクッキーの味はバターの量と粉の味わいで決まるそうです。

そのバターと小麦粉の相まみえるのを支えるのがカリフォルニア産アーモンドとイングランドのマルドンというところで古来の製法によってつくられた塩ということです。

ていう能書きを聞いていたのでワクワクしながら食べたのですが、別に普通のクッキーです。ぼくが味音痴なのかしらと訝しげに二口目を食べるとナッツの香ばしさとほんのりした塩味が甘みを誘いました。美味いぜこれは!ということで即採用とさせていただいたのです。

クッキーはふくろうの型で抜いていただきました。このふくろう型、先生が米国で勉強をしていたときにファーマーズ・マーケットで求めたそうです。もちろん、この日のためにね。

クッキーの味は二つ、紅茶味もあります。この紅茶、普段ティーサロンで淹れている紅茶を粉にしてアクセントとして用いているそうです。

ぼくは言葉を書くのが仕事ですが、言葉っていくらでも偽れるんですよ。心にないことも言えちゃうし書けちゃう。それが言葉の面白いところでもあるのですが、ところがどっこい手はそういうわけにはいかない。目は口ほどにものを言い、手から生み出されるものを偽ることは難しいでしょう。書、陶芸、彫刻、絵、そして料理も然り。

「画廊での佳いお茶の時間のお供になるように」と考案いただいた自慢のクッキーです。

 

写真を始めたばかりの頃、グループ展に出すために撮り下ろしで人物を撮っていたのですが、そのときに先生も撮らせていただきました。その時の一枚です。るり先生、二十代の頃はモデルもされていたそうです。

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