壽屋コピーライター 開高健

関西から出てくる広告って面白い。
ちょっと人を喰ったような、それでいて憎めない、そういう広告が多いように感じます。

そういう広告が受け入れられるほどの懐の深いカルチャーが関西にはあるからだと考えているのですが、それらのクリエーティブを創りだしていけるマインドってアマチュアリズムなんじゃないかと思っています。

そういうすぐれて人々の心に突き刺さり、共感を誘う流れをつくるという無意識の水脈の率直な追求が、時としてうーんと思ってしまうところがあるにせよ、時のサントリー宣伝部の人たち、特に開高健がつくった広告をすぐれてユニヴァーサルにしている要因の一つだと感じます。

この本は開高健がコピーライターになるまで、そしてコピーライターになり、芥川賞作家となった開高健の生きる足跡を綴った本です。

酒造メーカーに勤務しながら、毎日の仕事の終わりにはガード下の立ち飲みでハイボールを何杯も呑んで家路につく、その同時代性が会社員として働く人たちの共感を生んだのでしょう。

開高健の呑む酒も時間の経過とともにハイボールからワインになり、あの珠玉の名作「ロマネ・コンティ・一九三五年」を作家に書かせたのではないでしょうか。

この本によると開高健はとても書くのが遅かったらしいです。テーマとなるモチーフを見つけ、カタチにするのに長い時間が必要な種類の作家であったと記してあります。そして書く前は自分の机の上を原稿用紙で綺麗に拭いてから執筆に取り掛かったそうです。

作家の生き様とその作品の芸術性、つまり作品と作家性は無関係ですが、ぼくのような景色がよく見えないものには、その作家の生き様を以て作品の理解の手がかりとなることが多いです。

ラテン語のことわざに”Verba volant, scripta manent.”というのがありますが、意味は「言葉は飛んでしまうが書いたものは残る」という。書かれたものは時を越えて残ります。

ここは茅ヶ崎にある開高健記念館の書斎。右側に置かれた灰皿とグラスがとても印象的でした。

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