安東の作品は現在までに三つの時代に分けて捉えることができます。
土浦一高美術部から藝大の学生時代を“On Base”、資生堂宣伝部を経て銀座でデザイン事務所を構えていた、広告の世界に身をおいていたときの“Down South”、そして新たな光を求めて土浦のアトリエで制作に打ち込む今を“Up North”と括っています。
ご承知のように美術の源泉は「個」にあります。その画家の「個」を説明することは実際に作品をご覧いただくことが一番早く確かだと感じています。安東の絵をご覧になり、作者が描きたい世界の一端を汲み取っていただけたら、これにまさる喜びはありません。
東京藝術大学 美術学部を卒業、株式会社 資生堂へ入社、宣伝部へ配属、アートディレクターとして「ゆれる、 まなざし」、「君のひとみは10000ボルト」、「ナツコの夏」、「ホワイトブレンド」などのキャンペーンに携わり、成功させてきた人物のひとりです。あらためて絵画制作をはじめたのは2004年頃から。作品はカラーペンシルを用いてイラストボードの上に描いていきます。
安東克典の生まれた家はいわゆる軍人の家系、本人も防衛大へ進むつもりでいましたが、いかんせん勉強の方はさっぱりでした。そのため高校三年の時、好きだった絵を学ぼうと美大へ進むことを決意しますが、絵が好き、というだけで美大へ入れるわけがなく、受験までの一年間は高校の美術部へ在籍、絵画制作の基礎を改めて学びますが、その努力の甲斐も虚しく最初の受験は失敗、合格まで二年の歳月を要しました。
絵画の真の目的は物体の真実の姿を描き出すことであり、見えているように描くことではありません。知覚できる物体の本質、存在を常に描こうとするために、そこに表現される像は見かけと異なるものになります。