小澤征爾音楽塾オーケストラ・プロジェクトI

もう十年以上前のある夜のことです。

小澤征爾を聴きにサントリーホールまで行きました。

会場 サントリーホール
指揮 小澤征爾
オケ 小澤征爾音楽塾オーケストラ
曲  ラヴェル:マ・メール・ロワ
ベートーヴェン:交響曲 第7番

「OZAWAの指揮はムラがある」とかごく一部で言われていますが、ムラがあってもいーじゃないですか、人間なんだから。それに彼が紡いでるのは工業製品じゃなくて音楽なんだから。だからこそ佳い演奏に出会ったときの喜びも一入だと思います。

席に座って少し緊張しながら時を待ちます。
やがていちベルが鳴りクラリネットがリードを咥えてやってくる。
ラーーーーーーーーーと管がチューニングし、その後は弦へと続く。
完全五度の響きの後の静けさ。
もしかしたら演奏よりもこの瞬間が好きかもしれない。

すでに小澤もスタンバイしています。
こういうポジションのとり方も小澤を好きな理由のひとつです。
昨年見たときより、なんだかさっぱりした表情で肩の荷がひとつ下りた感じにも見えます。

一曲目、マ・メール・ロワは弦がとても滑らかで。小澤が指揮を振っているとおりに音が彩なし紡がれていきます。何十人もいるオケには聞こえず、まるでひとつの楽器みたいに聞こえます。 インターミッションを挟んでベト7。第2楽章で一瞬「おっとアブねぇ」と感じる時がありましたけど、第4楽章はそれはそれは情熱的でした。 それにみんな演奏してて楽しそうです。だから、コントラバスのお兄さんがピチカートの時、手にした弓で前の列のヴァイオリンのおねーさんの背中を突いてしまったのは見なかったことにしよう。

今回、席が一番前の列の第二ヴァイオリンの前あたり。この日は全席完売、当日券は無しという状況でした。サントリーホールだったら2階席の一番前とかの方が良かったかもしれないと思いました。でも、第二ヴァイオリンとチェロの人たちが弾く内声がとてもよく聞こえました。