虹色の風が鳥を誘って宙を踊っている いつものあたしなら風転がしては一緒になって空を舞おうとするはずなのに 今日はなぜか大声を張り上げる気も起こらないし電信柱の間で弾んでいる電線が気になって片足さえ動かせない ぼんやり二階の窓から街を眺めていたら急に雲が淀みはじめて拒む努力もしないうちに細かい雨たちが降りてきた 手の中で弄んでいたガラス玉は指先で摘み上げられるよりはむしろ小指と薬指の隙間あたりを彷徨っているのが好きらしいし 仕舞い忘れた風鈴は錆びた約束事みたいな錘の裾を褪せさせたまま揺れずにいるのがお好みらしい 髪に湿り気を与えていただけの雨が雫になってぽとりと小さな音を立てた時 窓を締めなけりゃいけないことに気付いた あんたは優しいんだね あんまり優しいからあたしはあんたの言葉も温もりも存在すらも忘れてしまうのに 何にもないあたしの脳の片隅でなんだかあんたが愛しいよ 氷が鈍い光を反射するみたいにここにいるのが 不安定で それにも増してあんたがいるのが不思議だからあんたを好きになりかけてる心をこのまま少し見つめていようか いつもの千倍も悲しそうに見据えるあんたの心を感じるまでもなく今日のあたしはおかしいんだね 一緒に暮らしてみようか ねえあんた あんたはいい奴だからさ いつまで持つかはわからないけどね あんたが持たなくなるまでさ真っ黒な空が躍起になって滴り落とす雨粒が静かに闇を扶り 取っても それがいつかあんたを溺れさせる涙だってことに気付く程 今のあんたは褪せていないんだね 優しいよ あんたは あんたの気の済むようにおやりよ 正確時を刻む心臓の鼓動を微かに聞きながら 弾けたシャボン玉みたいにあんたが壊れていくのがわか