コヒマル漁港。
ホテルが同じだったアイルランドから来た夫婦の奥さんが、ある朝、“老人と海”の単行本を手にしていた。
「今日はそこ?」と訊ねると
「そうよ、ヘミングウェイが大好きなの、あなたこの小説を知ってる?」
「もちろん。悲しい小説だよね。」
「そうね、私もこれを読むと涙がとまらなくなるの。」
「わかるよ。帽子を持っていった方がいいよ、コヒマルは日射しが強い。」
「ありがとう、そうするわ。」
エレベーターを降りてロビーで話していると旦那が駆け足でやってきた。
「バスが来たぞ!」
「いま行くわ、じゃあ、よい日で。」
「ありがとう、あなたたちも。」
アーネスト・ヘミングウェイの小説、「老人と海」の冒頭はこのコヒマル漁港のレストランからはじまる。
主人公の漁師、サンチャゴは毎日、陽の上がる前、未だ暗いうちから海原へ舟をこぎ出して漁へ出ていたのだ。80日以上不漁が続いても、決して諦めることなく毎日、漁へ出ていたのだ。
朝食はコーヒーを一杯、飲めればそれでもマシだった。
昼メシは舳先に吊した瓶に入った水を飲んだ。
でっかいカジキマグロと3日間に渡る死闘を繰り広げていたときは、マグロやトビウオを捌き生で食べていた。その時はライム、あるいは塩を持ってこなかったことを少し悔やんでいたサンチャゴ。
これはコヒマルにある要塞。
アメリカ合衆国はキューバに対して経済封鎖をしていて、アメリカ合衆国経由ではキューバには入れないし、キューバで買ったものはアメリカ合衆国へ持ち込めない、のだが、なぜかアメリカ合衆国ではキューバ産の葉巻は高値で売れているらしい。
その一方でアメリカ合衆国から時々スピードボートでキューバへ遊びに来ちゃう人たちもいるらしい。
その上陸地点がコヒマルなのだが、この要塞はそれを見張るためにある。