夢の中に出てくるあたしの王子様はいつも白い馬に乗っている 青い空滑って白い雲飛ばしてやって来ては手を差し伸べて あたしを一緒に連れて行ってくれる 幼い頃のあたしは陽の光が一面を弾き回って眩し過ぎるくらいの青い空の片隅を流れる雲を見るのが好きで 窓の脇で速度を弛めながらあたしを見返す雲を見つける度に心弾ませ夢を探してた 眩しさがいくらか柔らいで空が空でなくなって無色であれ虹色であれ夢がいくつかうつつに重なりはじめていったけれど 僅かずつ形を崩していく雲たちを払うのはいつでも空吹く風で せっかく見せてくれた夢を指先で弾いて壊してしまうのはいつでもあたしが好きになった男たちだった 夢の壊れてしまうことが理解ってしまえばそれも普通のことになってしまって 別に悲しくもなりはしない だって天気が良ければ夕焼けだって見えるし 屋上に上がればまあるい空だって見えるし 機会があれば空の向こうに飛べそうな気がするって夢壊れる度に想ってた 夕暮れに物干しの向こうをカラスが渡って屋根に掛かったシャボン玉が目に染みたから試しに空を泳いでみようかと片足で地面を蹴ってみたらば 思いも掛けないくらいに楽にあたしは宙を舞っていた 空の上から見下ろす街は思ったよりも優しげで 明るいはずの燈火たちがぼんやり闇に滲んだ時に シャボン玉が弾けて散った シャボン玉の割れた音に驚いてあたしは何だか妙に可笑しくなって笑いだしてしまった 暗いばかりで何にも見えずに やっぱり空は空でなく なってしまっていたね