#14 晴れのち雨、ホテルから寿司。

オペレーションオーヴァーロードの当日は雨だった。

何事も策を弄するとうまくいかないということだろう。


「雨、降ってきたみたい。」
「うん。」


朝、奈津美を迎えに行く時は晴れていたのたけど、首都高に乗り、湾岸線を抜け、横横を通って逗葉新道に出るころから雲行きが怪しくなってきた。


も・じ・ど・お・り、雲行きがアヤシイ。


「万全の日焼け対策してきたのに。。。。」
「プランBにしよう。」
「そんなのあるの!」
「もっちろん、代理店営業を見くびってもらっては困りますな。」
「すごーい。」
「わはは。」


木造二階建てのホテルの駐車場にクルマを入れ、お茶の飲めるテラスに席をとった。
奈津美はロイヤルミルクティー、俺はコーヒーを貰った。


テラス席にほぼ並んで座り、ふたりとも海を見ながらのんびりと過ごした。


「こんなところよく知ってるね。」
「好きな作家がいるんだけど、その人の小説によく出てくるんだよね、ここ。」
「そうなんだ。」
「いつか誰かと来たいと思っていて、とっておいたんだ。」
「。。。」
「お腹空かない?」
「空きました。」


真夏とはいえ雨を含んだ潮風は冷たい。
その風を受けて奈津美の髪がそよぐ。
ショートパンツから伸びるスラリとした脚を足首のところで軽く重ねている。


「由比ヶ浜に寿司屋があるんだ。」
「お寿司?」
「うん。夫婦二人でやっているこじんまりした寿司屋でさ、鎌倉の小町みたいに観光客が来ないから静かなんだ。それになにより美味しい。」
「食べたい。」
「でしょ。」


ホテルのフロントにクルマを預かってほしいと告げた。


「電車?」
「うん、せっかく美味しい寿司を食べるんだから、少し飲もうよ。」
「いいわね。」


江ノ電を由比ヶ浜で降り寿司屋への道を歩いた。


「ひょっとして、ここも?」
「ご明察です。」
「うふふ。」


ホテルを出る時より幾分、奈津美の足取りが軽くなっているのに気がついた。


あの小説に出てくる寿司屋、見つけておいてよかった。