#2 はじまりのそれから

できた事と、できなかった事。


できた事


・前日に、日付と場所の、確認メールを入れる
・「トイレ大丈夫?」と訊いてあげる


できなかった事


・当日までに濃い色のデニムを買っておく
・スマホのカバーを新しくしておく
・告白


津田は洗濯機がまわってる間、ずっと前に立って見てるらしいんだけど、俺もうあいつの事笑えないね。


時間って不思議だよね。決戦の日までには腐るほど時間があって、五月の後半なんか、夜中の2時から4時半までは本当にいらないなー、とか思ってたのに直前になって慌てて、結局学生の時からはいてるジーパンで行っちゃったもん。スマホカバーもパーマンのまま。まあ、それは食いついてもらえたけど。


奈津美さん、何なんですかそのエイヒレテンション。もっと、分かりやすくいこうよ、はっきりさせようよ、つらいっすよ。


ごめんなさい。おれもかっこつけてました。
自宅で黒ビール飲みながら小説読んでる時もあるけど、この世で一番好きなのは、半カップブラ。Tシャツみたいなワンピースに、後ろから風吹いたの見たら、「これもう尻やん!!」って、頭の中関西人になっちゃうときあるし。


だからさ、おれこんなお座敷遊びみたいな雅な恋、適性ないっす。


でも、可愛かったよなあ。会えるまでの妄想に実物が勝つパターンって、なかなかないよね。


メイベリンもケイトもプリマビスタもがんばってるけど、男の記憶補正には遠く及ばないもんね。そこ行くと昨日の奈津美は、超えてきてたもん。


ベージュピンクのショートパンツに、白のカットソー(袖なし)、グレーのジャケット。


あの子、おしゃれなんだよね、トータル。


おしゃれで可愛い子なんだよね。


どうしよう。ソニーのデジカメじゃないけど、全部背景がぼやけてる。


横並びで、向き直られたときの破壊力。
あんなに可愛く、おでこに汗がかける子、どこの陸上部にもいないよ。


いやマジで。二人で飲み過ぎて、肩によりかかられたし、ごめんなさい、谷間も見えた。
ちょっと、手も握られた。


出し抜けにマレーシアの、水着の写真も見せてきたりして。


なのになー。それもぼやけてるんだよなー。背景なんですよ。
谷間が背景だぜ?
俺のピントを独占してるのは、あの笑顔かと思いきや、それもちょっと違う。


「なんかさ、時々人生って、思い出すためにあるのかなって、思っちゃう。」


奈津美がぽそっと話しはじめて、俺はこの時、茶化す気満々。それまで二人で好きなローカルCMの話してたんだもん。


「でもさ、それっておかしいじゃない?経験が先行しないと、思い出す事もできないわけで。だけど何となく最近、なんで生きてるかって、あとになって色々、思い出すためなのかもしれないって、思うときがあるの。」


「今日とか、絶対思い出すよー。思い出しすぎて人生のどの辺の事だったか、分かんなくなっちゃいそう。」


その表情と、声ね。


何か顔見れなくなっちゃって、クラシックラガーのラベル読み込んでるフリしちゃったけど・・・。


あーもう、いよいよだめだ。


戦略?ファクト?・・・


奈津美ちゃん、君は一体何なんだ。可愛くて、おしゃれで、タレ派。


IT化とかいうけど全然、貴方を知りません。しょぼぼん。


でもほら、「分からない」って、案外チャンスなんじゃないか。
前章を復習。


理解が追い付かない分だけ、俺の内面資産は、最愛の投資対象に向って、全力で運用を求めてる。